某有名進学塾講師の川野氏(33歳)その2
川野氏が「熱血教師」タイプだったらちょっと苦手かもしれない、なんてお会いする前に思っていた田中。
お会いした際、川野氏が開口一番、「田中さんとお会いできて嬉しいです」と田中の目をじっと見ておっしゃってくれて、びっくりした田中。お世辞でもこうして面と向かってストレートに言われると、誰でも嬉しいものではないだろうか。田中の緊張が少しほぐれた。
川野氏が選んでくれていたお店へ向かうと、そこは上品なイタリアンのお店だった。席へ促され、お店の方がメニューを持ってきてくれる間も、「いやあ、女性の方とこうして向かい合って食事をすることに慣れていなくて、本当に緊張します。すみません、緊張しっぱなしで」とひたすらこんなことをおっしゃっていたが、そんな風に今の気持ちを隠さずに表現される川野氏のことを、素直な方だと思った。
田中はどちらかというと、緊張しているのをなるべく隠そうとしてしまうところがあるので、よりそう感じたのかもしれない。
メニューが届き、何を注文しようかと思いながら眺めていると、「初めて来たので何を注文していいか迷います」「ああ、こんなに色々あると本当に何を頼んだらいいか迷いますね」「あっ、これもいいと思ったけど、これもいいですね」「これは取り分けて食べる分かな?」「あっ、田中さんも遠慮せずに頼んでくださいね」と少々落ち着かない様子。
でも、これは川野氏の田中に対する気遣いもあって、また初対面の人と食事をするときは田中もすごく緊張するため、そんな風になってしまうのが分かるというか、どこかかわいらしい感じが見て取れて、嫌だとは思わなかった。逆に、すごく女性慣れをしていて、何一つとってもスマートに対応されると田中は気後れしてしまう。
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