屋上でのバイキングにて その2
初めて会った長野氏は、プロフィール交換した写真通りで、少しぽっちゃりめの体格、人の良さがにじみ出ている風貌であった。
少し緊張をしているのか、その百貨店の屋上へと上がるエスカレーターの中でも二人の距離感が微妙すぎて、他の方々もいたため、特に話すでも無く、ぎこちなかった。
予約をしてくれていた屋上でのビアガーデンのような、食べ放題の場所で席につき、飲食の説明を受けた。
長野氏と向かい合って座ったが、お店の方の説明を受けた後、「では、取りに行きましょうか」という感じになってしまった。ドリンクもセルフで取りに行くところだったために、テーブルには何も無く、向かい合って座っていても特にすることがないためそうなった。少し話してからそれぞれが席を立つほうがよかったのだが、バイキング方式だとそれが難しいのだなと感じた。
漆のような、和風のお盆を手渡され、料理ごとに用意されている小皿に取り分けた物をそのお盆に乗せて席へ戻ると、ほどなくして長野氏もお盆片手に戻ってきた。と、そのお盆を見て田中はびっくりして言葉を失った。なんと、取り皿を使わず、そのお盆の上に直接、いくつかのおかずを乗せていたからである。
各料理の側に取り皿が置かれていたはずだ。案の定、長野氏のお盆の上で、いくつかのおかずの汁が混ざり合っていたし、お盆もあまり清潔ではないように見えてしまった。
その様相を見て、バイキングの場で長野氏と一瞬でもすれ違っていれば、それとなく伝えたかったと思ってしまった。
田中が取り皿に入れてお盆にのせているのを見て、「ああ、そうすればよかったんですね」とおっしゃった。なんだか気まずい空気が流れた。
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