車を披露したかったのかな その5
予約してくださっているお店はその場所からすぐだということが判明し、それなら駐車をしに行くために田中が乗車する必要はないのではないかと思えてきた。待ち合わせ場所は某駅の改札を出た付近だったこともあり、電車でお越しかと思っていた。車で現れた柳田氏とは初対面だ。しかも婚活を通して出会っているため、駐車だけのためであっても車に乗ることはためらってしまう。
「あの、私、ここで待っていてもいいですか?」と聞いてみた。素直に従えばよかったのかもしれないが、初めて会ってまだ数分しか経っていない方の車に乗り込むのは恐怖でもある。すると柳田氏は、こちらの気持ちを察したようでもなく、「え、ええ・・ あ、そうですか・・・わかりました。すぐに駐車してきます」と、ムッとするでもなくそうおっしゃった。ああ、よかった、と田中は内心ホッとした。
柳田氏が駐車をしに行っている間、なぜこのような展開となったのか考えてみたりしていた。柳田氏は、ひょっとして車を披露したかったのだろうか。お店がすぐそこなら、先に駐車をして、待ち合わせ場所に現れてもよかったのでは・・・
そういえば、柳田氏の趣味の欄には「車」とあったように記憶している。車のことはよくわからない田中でも、柳田氏のそれは一目でわかるくらい「良い車」だった。普段、街中で見かけるような車とは違って、車種はわからないが、明らかに高級なものだった。
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