お会計にて その11
柳田氏は車が好きで二台所有されており、頻繁に気に入った車を見つけては買い替えているという話を聞いて、一般庶民の田中は仰天してしまった。不労所得で生計を立てている柳田氏は、実際のところどのような生活をされているのだろうか。ものすごくお金持ちのような気もするが、一人で管理していくには丁度いいくらいなのか、車には特別お金をかけているだけなのか・・ 周囲に柳田氏のような方がいないため、柳田氏の私生活全般に謎が多く、そこが気になる存在となっている。
初対面での食事を終え、一緒にお会計へ向かった。二人分合計で11,232円と表示され、田中は6,000円を柳田氏に手渡すと、「あ、はい」とおっしゃって受け取り、そのあとおつりを返してきてくれた。お店の予約をしてくれていたので、おつりはいいかと思っていたが、いったん受け取ることになった。すると柳田氏がとっさに「あ、間違えました。〇〇〇円でしたね」と田中の手のひらから差額を取ろうとされたが、手に触れそうになったからか「・・・あ、やっぱりいいです。それで。」と柳田氏はおっしゃった。ほんの数秒間のやり取りではあったのだが、田中の手のひらから間違えていた分の差額を取ろうとした行為に驚いてしまった。お金を大切にすることは良いことだが、初対面で出会った者同士、きっちりとおつりを分け合い、レジ付近でモタモタするのがあまり好きではない。ぎすぎすとした空気だけが残ってしまった。何も全額ごちそうになりたいと言っているわけではない。自分の分は自分で支払うつもりでいる。だが、おつりを巡ってきっちりと分け合い、お金を戻そうとしたり人前で数えたりと、後味が良いものではなかった。
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