お洒落なサングラスと車内の音楽 その14
二回目に待ち合わせをした際、車で現れた柳田氏は窓から腕を出して合図をしてくれ、かけていたお洒落なサングラスに驚いてしまった。人様のことを言えた立場ではないのだが、柳田氏は前回お会いした際、お世辞にもおしゃれとは言いがたい格好だった。そして、例のセカンドバッグをしっかりと右の脇下に挟んでいた柳田氏。そんなにしっかりと挟まなくても・・と思ってしまったのだが、ここはひったくりの多い地域でもある。防犯対策だろうか。今回も前回と同じような服装に、ビジュアル系バンドの人たちがかけていそうな洒落たサングラスだけが浮いているように感じられたのだが、運転するにあたり、日射しよけなのかもしれないと思い直した。
精一杯、その驚きを隠しながら、田中は助手席に座らせていただいた。バスターミナル付近ということで入ってくるバスの邪魔になってはいけないため即移動となり、運転を始めてくれた。
やはり、運転席と助手席とは近い。まだ慣れない間柄でのこの距離間に落ち着かず、何か話そう、えっと・・と考え始めたところ、柳田氏がそれまでに聞いていた音楽を流し始めた。それがロックの激しいもので、次第に柳田氏は上半身からアゴを使ってその音楽に合わせながらリズムをとり始めた。
この狭い空間に横並びで座っているのだが、なんだか田中だけどこかに置き去りにされてしまったかのような、一緒にいるのに孤独を感じ始めた。車内はもう、完全に柳田氏の世界ができあがってしまっていた。
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