なかなか会話が成立しない その16
ようやく柳田氏が考えてくれていたカフェへ到着し、車をとめて中へ入った。ここに着くまで、この日はろくに会話をしていない。挨拶と少し雑談をボソボソと交わした程度だ。柳田氏は車内でロックを流し始め、上体を使ってリズムをとりながら運転していた。
そこのカフェは、車がないと行きにくいところとあって、満席ではなかった。このカフェができて1年くらいだろうか、ロッジ風の開放感あるお洒落なカフェだ。木の香りを感じるこの空間はとても気に入った。
柳田氏は、ドライブの途中でよくこのカフェに立ち寄るとのこと。一人で来て、しばらく過ごして帰るだけなんですけどね・・と自虐的に話された。「今日は土曜日とだけあって人が多いですね。僕はいつも平日の昼間に来ているので・・」
管理や事務的な仕事はあるにしても、不労所得で生計を立てている柳田氏。ささいなそんな一言からも自由のある生活を感じさせられる。柳田氏のあくせくとしたところを見たこともなく、柳田氏の周りはとても優雅な空気が流れている。そしてどこか浮き世離れした感じもする。
向かい合ってコーヒーとマフィンを頂きながら、柳田氏の大学時代や、卒業後、しばらく働いていたという不動産会社でのこと、結婚観についても聞いてみたいと、田中から話を振ったりしていたのだが・・ 柳田氏はおとなしく、会話もたどたどしい。なかなか会話のキャッチボールが成立せず、もどかしい思いをした。
決して田中が矢継ぎ早に質問をしているわけではない。柳田氏はお姉さんが三人いらっしゃるので、女性と話すことに慣れていないとも思えないのだが、婚活相手となると話はまた別だろうか・・
今回もあまり話が続かず、ご自身の意見や考えを聞いてみたかったのだが、あまり反応がなかった。田中なりに柳田氏が話しやすいように配慮したつもりだったのだが、うまくいかなかった。
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