お店を出た後、そこでお別れかと思っていたら その7
撮った写真を誰に見られるかわからないし、何年も保存されても困る・・そんな思いで、一緒に写メを撮る事を断ったことで、細川氏は少し不機嫌になっていた。だが、さすが営業職の細川氏、お店を出た後には何事もなかったかのようにまた爽やかな笑顔を向けてきた。「もう一軒、軽く行きませんか? すぐそこに屋台風のおでんのお店があって、お酒におでんの汁を入れてもらって飲んだら最高においしいんですよ!!」
細川氏は、先程のお店でもかなりビールを飲んでいたが、飲み足りない様子。時間は21時を少し過ぎたところで、この後一時間くらいならお付き合いしても時間的に問題はない。それに田中自身、もう少し細川氏と過ごしてみないと、このまま帰宅しても今後、どうしていきたいのかこの時点でははっきりとした気持ちを持っていなかった。
「そうですか、それでは少しだけ寄ってみましょう」と応じることにした。
その屋台風のお店は、とても狭い空間に円形の大きなテーブルが一つ置かれていて、びっしりと小さな椅子が円に沿って並べられていた。その円形の中にお店の方々がおり、そこでおでんの準備をしたり、そこから料理やお酒を出してくれる。着いた頃にはほぼ満席で、かろうじて二人分の席が空いていた。
席に座ると、お店の方が細川氏に向かって挨拶をした。細川氏はよくこのお店に来ているのだろう、とても親しい感じで、「あれ、今日はまた違う子連れて」なんて言葉をかけられていた。
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