そんなにスマホが手放せないなら その5
食事も終盤を迎え、食後のコーヒーが届くまで、藤井氏はスマホに電源を入れ、急に画面を操作し始めた。
ニュースが気になったのか、何かお知らせが届いていたのか・・ 一瞬で吸い込まれるようにしてスマホに夢中になり始めた藤井氏。田中が古い人間なのだろうか。日頃から人と会っているときは、なるべくスマホを使ったりメールの返信をしたりはしないのだが、緊急の際は一言相手に断ってからその作業をする。しかし、あくまでも会っている人との時間の方が大切で、目の前にいる人をほったらかしてスマホに夢中になることは田中は100パーセントない。それは無礼だと考えている。だが、若い学生さんたちは数人で集まっていても無言で、直接話すのではなく、ラインを通してみんなと会話をしているという話を聞いたことがある。
藤井氏とは向かい合って座っているのだが、なんとなくポツンと取り残されたような気がしてくる。田中の周りの人たちは、スマホで対応が必要な際は一言断ってくれるのだが・・ と、こうした自分自身の価値観やこうあるべき、を他人に押しつけてはいけないと思ったりもするのだが、いや、これはマナーの問題ではないか、と思ったり、自分がこういうことに厳しすぎるのではないかと反省してみたり・・ こういうちょっとした「あれ?」と思うことに対しても寛容に対応できなければいけないなあ・・と思ったりもする。
応援してください