留学経験有りのメーカー勤務、古屋氏(35歳)その9
出会いから約20分で敷地内同居婚は無理だと判断を下した田中。
古屋氏は注文したワイングラスを飲む度に饒舌になっていく。
正直、会話についていくのも既にしんどいと感じていた。
なんだろう、この感じは・・。
一方的に話し続け、田中に話す隙を与えない。
田中から質問をしようにしてもその「間」すら与えられないのである。
それでも、やっぱり会う約束をした以上、その時間はお相手とこの初顔会わせに集中するべきだと思い、聞いてみたかったことを聞いたり、何かの拍子でこの空気感を変えていけるかもしれないという期待もあり、アメリカ留学について聞いてみた。そして田中はアメリカではない某国に遊学していたこともあるので、そういった話をしてみたところ、「やっぱり留学ってアメリカへ行かないと意味がないと思う」とハッキリと言われた。確かにその言い分も分からなくはないのだが、人それぞれ目的もあるわけで・・
なんだかそれ以上話す気も失ってしまったくらい、上から目線な物言いが続いた。
初対面で、お互いのことをまだ知らない同士なのに、なんでこんな言われ方をしなければいけないのだろう、と思い始めた頃には既に不快感でいっぱいになっていた。
少しでも雰囲気を良くしようと頑張ってみるのも無駄に思えてきた。もう一刻も早く帰りたい気分・・・
古屋氏と今後、会うことはないだろうと感じ始めてからは、無難にこの場を収めることに重きを置いた。
古屋氏はアメリカでの成績や、取得した学位について語り始めたが、田中が飲み干したジュースを見て、「もっと飲んでください、今日は1回目なので、ここは私が全部払ってあげますから」と。
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