ニコニコしている川野氏 その５
川野氏は熱血教師風ではなく、どちらかと言うとひょうひょうとした感じで、子供にも親御さんにも受けが良さそうだ。教室で教えているときと田中の前とでは少し違うかもしれないが、親身になって色々と相談に乗ったり、人のお世話を買って出てくれそうな、頼もしそうな感じもする。
お酒を飲んでいるわけではないが、川野氏は笑顔が多く、にこにこされるとその場の雰囲気がやわらぎ、段々と居心地の良さを感じ始めた。ああ、こういう素朴な感じの雰囲気の30代男性って珍しいな、と川野氏の存在が気になり始めた田中。
注文していたパスタが届き、簡単に二人分を取り分けた。パスタ用にフォークとスプーンが用意されていたが、「こういうのでなかなか食べられなくて。すみません、お箸を頼もうと思います」と田中に一言断ってお店の方にお願いをされていた。変に格好つけないところが、田中にとっては好感度が上がった。
次に薄い生地のピザが、切るためのローラーのようなものと添えられて運ばれてきた。すると川野氏が、「わっ、このローラー、面白いですね！！ これはこの生地を切るものですか、へえ～、初めて見ました」とまたまた素直な感想を口にされ、その無邪気さが新鮮に思えた。
いろんな事に興味を示され、好奇心の塊のような川野氏。田中のまわりのくたびれた大人たちとは全然違う。
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