謎めいた行動 その6
柳田氏が駐車をするために去った後、田中はその場で一人、戻ってこられるのを待っていた。この後に食事をするところの駐車場にとめるのであれば、すぐに戻ってこられるだろうと思っていた。それなのに、15分、20分・・と時間が経つにつれて「あれ?」と思えてきた。もしかして機嫌を損ねて帰られたのだろうか?とまで思い始めた頃、メールが届き、「もうすぐ着きます」とのことだった。そして現れた柳田氏は、コンビニで購入されたドリップコーヒーを片手にしていた。よくレジ横に置いてある、紙もしくはプラスチックのカップに自らコーヒーを注ぐあの部類のものだ。のどが渇いたのかもしれないが、車に買い置きしていた缶コーヒーではなく、少し前にコンビニで買って注入してきたものと明らかにわかるものだったため、その行動に首をかしげてしまった。田中なら、待たせている人がいたら急いでその場へ向かうのだが・・ ましてや、自分だけコーヒーを買って飲みながら現れるなんて・・
「田中さん、お待たせしました。お店はこの裏の建物の最上階です」
先程、柳田氏は車に乗っていてわからなかったのだが、やはりプロフィールにあったように細身の体型をされており、無駄な脂肪というものは持ち合わせておらず、骨と皮だけという表現があるが、まさにそれに近いものがあった。そして、田中の父親世代が昔よく持っていたであろう、小型のセカンドバッグを右脇に挟んでおられた。
気を取り直して、一緒にそのお店へ向かった。並んで歩くというよりは、少しだけ柳田氏が先を行くような縦列体制であった。そのため会話はほとんど生まれなかった。
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